映画「土を喰らう十二ヵ月」を見て思うこと。


お正月に、映画「土を喰らう十二ヵ月」を見に行った。話題作ではあるが、シネマには私と同世代であろうシニア層のカップルがぽつぽつ。もしかしたら、奥様たちは沢田研二の主演目的だろうか。
とにかく、ハードバップなJAZZのBGMのなか、東京から主人公「ツトム」(私と同じ名前なので少しこそかゆい)が住む信州白馬の家に向かう一台の車の映像から始まる。(少し意表を突かれる感じだ)

少年時代、禅寺で精進料理をつくるなどの修行を経験し(結局そこを逃げ出した)たことのある主人公が、畑と里山で採れるものを精進料理の知識も踏まえて調理して食べる1年間(主な二十四節季)を描いた人生のドラマだ。

自然と共生する無理しない暮らしの素晴らしさと贅沢さが、白馬の美しい里山風景と共に静かに心にしみる。私のように、土と暮らす(農)人間は実感としてそう感じるが、都市部で暮らす人がこの映画でどんな感覚を覚えるんだろう。と思う。

主人公が、山仕事をする父を回想する場面で、「父は握り飯と味噌だけ持って山に入った。昼になると、その辺の山菜を採って、味噌といっしょに葉でくるんで、焚き火で焼いて食べていた。小さかった私は、それが貧しく、恥ずかしいものだと思っていた。今自分が同じように、山で火を焚いて山菜を食べている。なんて、贅沢な食なんだろうと今は思う」と、山菜とキノコ採りの師匠に話す場面が、なぜか印象的だった。

「食べることは生きることだ」と多くの人が語る。まさに、その通りだ。そして、この映画を見て、食べるものを育て(採取し)、生きるために調理することが人生の大切な時間なんだと強く感じる。そしてそれが、地域の文化を育んできた思う。

少し変な対比だが、映画の中では、梅干しと味噌と人間の生と死が大きなテーマになっている。
感じ方は、人それぞれだろうが、ファストフード文化・経済に疲れた時に、何気なく見て欲しい映画だ。

◎映画「土を喰らう十二ヵ月」

村上勉のエッセイ「土を喰らう日々」から、中江裕司監督が物語を紡ぎ出し、脚本と監督を勤める。一汁一菜で有名な料理研究家の土井晴彦が料理を担当(映画初参加だという)。
主演:沢田 研二 松田たか子

https://tsuchiwokurau12.jp

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