信州アーツ・クライメート・キャンプに参加した体験から思う。 「気候危機とアートの力」


2022年に、ここ信州にも地域の文化芸術活動の担い手を支援する「信州アーツカウンシル※」が誕生した。その活動のなかで、長野県文化芸術振興計画の検討の際に、委員から投げかけられた「気候変動について」。そこから端を発し、文化芸術の視点から気候変動や地球環境の課題を見つめ、信州・長野県において行われている取組や取り組む人と学び、共に考え、変化していくコモンスペースをつくっていこうというプロジェクト「信州アーツ・クライメイト・キャンプ」が2023年に始動した。2024年も継続中だ。

2024年1月20日、信州アーツ・クライメイト・キャンプより(奏の森)
信州アーツカウンシル ゼネラルコーディネーターで、信州アーツ・クライメート・キャンプの案内人「野村 政之さん」(2024年1月20日)

信州アーツカウンシル
自然豊かな風土や学びを大切にする精神などから育まれる、信州・長野県の多様な地域文化や文化芸術の創造性を、持続的に発展させていくことを目的に、長野県、大学、公的機関、民間支援団体、市町村など、多様な主体がゆるやかに連携しながら、一般財団法人長野県文化振興事業団アーツカウンシル推進局が運営主体となり、地域・県民主体で行う文化事業の助成、相談・助言などの寄り添い型の支援を行っている。

気候危機という大きくグローバルな課題に対して「自分は何もできないよ」。身に迫った危機感がない限り、そうなってしまうことが多いのは当然かもしれない。

しかし、一人ひとりの個人の力でできることは僅かかもしれないが、一人ひとりが当事者意識を持ち、皆で課題を共有し、誰かが言い出すこと(やり始めること)で多くの人たちが共感し、アクションを起こすことができれば、一人であきらめかけていた「何もできないよ」が変わり始めるかもしれない。やがて、それが広がり大きな変革が生まれるかもしれない。

言い換えれば、一人ひとりが課題(気候危機)に対しての当事者意識を持つことができれば、大きな変革につながるスタートになる可能性が生まれる。

そんな期待を持って、課題意識への啓発や学習、体験会が、多く実施されているが、一人ひとりに大きな気づきを与え、それが実践につながる。というのは、なかなかハードルが高いと言わざるを得ない。

信州アーツ・クライメイト・キャンプ」のプログラムに、参加させていただく中で実感として感じたのは、「課題を共有し共感するためにアート表現の力は大きい」ということ。アートを見たり、聞いたりすることで得る感動が起爆剤になるだけでなく、いっしょに描いたり、踊ったり、歌ったりすることで、自分の中に入ってくる感覚が起こる。
課題が自分の中に入り込めば、誰かに向かって吐き出したくなる。つながりが広がり出すはずだ。

気候危機が多くの人の中に、大きな課題意識として棲みつくのに、アートの力が重要だと実感させてくれたのが「信州アーツ・クライメイト・キャンプ」だ。

特に多くの若い世代を引きつけるのは、やはり人間が持っている音楽やダンスといった根源的なアートの力が大きいと思う。大人から子どもまで、みんなの課題を共有する共通言語としてのアートに期待したい。

「信州アーツ・クライメイト・キャンプ2023」の詳しい内容は、記録集「ともにつくる気候×アートのものがたり」をご覧ください。

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