2022年07月15日 編集長コラム
塩尻市奈良井宿「奈良井ラボ(※)」から感じた住民主体の意味
伝統との付き合い方
現世代が未来に継承しようとする伝統と次世代が引き継ごうと考える伝統のギャップを世代を超えてフラットに対話する機会をつくった2022年7月13日の「奈良井ラボ」は素晴らしかった。
これからの人生の長さ(例えば70代と20代)が違えば課題の捉え方も変わってくるのは当たりまえ、そこには思考の多様性があって当然だ。また、属しているセクターだったり、暮らしている環境でも考えは当然異なる。
ところが、「じゃなきゃだめ」「昔からこうだった」「伝統は守ってこそ伝統だ」といった凝り固まった、言い換えれば従っていればいいんだから「楽ちん」なやり方で、その捉え方の違いを無視してしまうことは多いと思う。しかし、新型コロナウイルスの影響もあり、それでは未来への継続が危ういと思うようになってきたのも当然の変化だろう。
伝統文化は、社会の変化に呼応しながら、変わりつつ引き継がれていくものだと思う。決して、守ることが本質ではない。
2022年7月13日、奈良井ラボとして、中学生から長老格の高齢の方まで、約40名が集まり伝統の祭りを見つめ直すために実施されたワールドカフェ方式のワークショップ。各テーブルの想像以上の意見交換の盛況ぶりを目のあたりにして、守るための伝統ではなく、住民の暮らしのための伝統なんだと再確認できた。
ワールドカフェ方式の成功例となるような、世代・所属などを超えた活発な意見交換は、将来、地域においてそれぞれの人が未来に歩みを進むために必要なエネルギーとなったとことだろう。
住民主体とは、まちを生きる人びとの自分ごと化の集大成なんだと思った。
祭りの後に開催されるワークショップがとても楽しみだ。
※奈良井区まちづくりプロジェクト推進のために、奈良井のこれからを考える まちの研究室「奈良井ラボ」が2021年10月に発足(全6回)。
(奈良井区まちづくりプロジェクト:江戸時代からの風情が色濃く残る奈良井区。重要伝統的建造物群保存地区に選定された街並みの保全や、そこで営まれる住民の暮らしに寄り添い、時代にあったビジョン・ルールづくりのための検討を行っています。2021年5月に始動したプロジェクト)