地方の中小零細企業だって社会貢献はできる! 小さな寄付を集めて地域を応援する仕組みづくり


寄付つき商品で子どもたちの未来を応援するプロジェクト
「信州1%project」

信州1%project (しんしゅう1パーセントプロジェクト) / 吉国明夫さん

2017年12月に発足した「信州1%project」(当初は「しおじり1%project」)。
参加企業とともに寄付つき商品・サービスを開発し、その販売で得た寄付金を活用して、社会貢献活動をする子ども関連団体へ人的支援(専門家派遣)などを行います。
(現在、非営利団体「信州ファンドレイジングチーム」(長野県塩尻市)が運営)

参加する企業にとっては、CSR活動に位置づけられたり、企業イメージの向上、商品・サービスの差別化によるイメージアップ&売上げ増につながります。
また、寄付を受ける団体にとっては、課題解決、活動のPR、社会的認知度アップ、また資金調達の助けにもなり、ボランティアスタッフ集めにも有効というメリットがあります。
そして購入者(市民)は、寄付つき商品の購入・利用によって、間接的にでも地域の子どもたちを支えることができます。

プロジェクトによる第1弾の支援先には、塩尻市で子ども食堂を運営する「ホットライン信州 こども食堂しおじり」を選定。

専門家による支援の様子

広報ツールの制作や、ボランティア登録の仕組みづくりなどを経て、子ども食堂の認知度向上のためのイベント準備・開催まで、2018年10月~2019年3月にわたって継続的に支援が行われました。

狭い教員の社会から、多彩な人とつながる地域の活動へ

「“代表”と呼ばれるのは苦手なんですよ。こんな爺さんが表舞台に出ちゃダメでしょう」

一見すると、穏やかな好々爺(や)。でも、話を聞くうちにその第一印象が間違っていたことに気付き、やがて「この人と一緒にやってみたい」と思わせてしまう、そんな不思議な“ゆる引力”を持つ吉国明夫(よしくにあきお)さん。信州1%projectの事務局担当にして、プロジェクトの発起人であり仕掛け人です。

冗談めかした話しぶりで本音を語ります。出身は石川県の奥能登地方。北アルプスに憧れて長野県塩尻市へ移り住み、長らく工業高校の教員として勤めました。
定年退職した後、何をしていいかわからなくなった時期もありましたが、地元のNPO団体に携わり、現場のスタッフとしても精力的に活動しました。

「NPOって単なるボランティア団体だと思ってたけど、そうじゃなかった。すごいことやってるいろんな人が、社会にはたくさんいると知ったんです」

そんななか、ファンドレイジングという言葉に出会いました。社会をよくするためのお金の循環を寄付によってつくるという考え方を学び、資格も取得しました。
インプットばかりではなくアウトプットの場を、と考え出したのが「勝手におもてなし隊in信州まつもと空港」。空港で観光客をもてなし、特産品を“勝手に”プレゼントしてしまうというアイデアが、クラウドファンディングによる資金と、企業の協力、そしてボランティアスタッフの支えで実現しました。

「この活動で、市の観光課とつながりができて、喜ばれて、人脈ができた。そこが大事だと思いましたね。自分もやればできるんだという自信にもなった」

小さな会社の小さな志も、集まれば支える力になれる

参加した日本ファンドレイジング協会の会合で、寄付つき商品を売り出した弁当店の事例発表に心が動きました。弁当1個で10円の寄付。それだけでその店の売り上げは大幅に伸びたというのです。

「これなら塩尻でもできる、自分にもできると思ったんです。大企業が利益を寄付に回すのはよくあるけど、それだと一企業の社会貢献事業になってしまう。中小企業でも社会貢献したい所は必ずあって、でも1社では無理。少しずつでもたくさん集まれば大きいことができる。それが“1%”の意味なんです」

そして立ち上げた、信州1%projectの前身、しおじり1%project。吉国さんは1人で地元の企業や商店と交渉し、意義を訴えて、賛同を募りました。市外にも輪を広げたいという願いを込め、冠を「信州」と改称。

プロジェクト第1弾の支援先募集には、4団体の応募がありました。「反応がないかもと思っていたので、手を上げてもらえたのはうれしかったですね。地元の新聞にも大きく取り上げられて、手応えを感じました」

社会貢献を学ぶ実践教育を、学校現場で実現したい

吉国さんがお金にこだわる理由は、やはりそれが基本と実感しているから。

「支援のしかたは人、物、情報などいろいろですが、一番困っているのはどこでもお金。お金があれば物も買えるし、人も雇える。ボランティアに頼るだけでは続きませんよ」

しかし、ただお金を渡すだけにはしたくないと、支援先に対しては、活動の悩み解決を助ける“専門家派遣”という形を取ったのも、こだわった部分でした。

プロジェクトが最初の一回りをし終えた今、吉国さんが感じている壁とは。

「怠け者の僕がこれをやれているのは、参加企業からお金を預かっている責任があるからです。ただ、年齢のこともあって運転免許を返納したので、足がなくなっちゃった。一緒に動いてくれる人が欲しいんです。あとは広報がまだ足りないですね。プロジェクト自体の認知度を上げて、企業にもプラスになるような宣伝とか、影響力のある人に力を貸してもらうとか」

さらに具体的なプランも構想中です。

Learning by Givingという、アメリカの大学生向け社会貢献教育プログラムを、1%プロジェクトと結びつけたいと考えています。

「社会課題を解決する寄付というものを実践的に学ぶ授業ですが、点数が付けにくいし、すぐ結果は出ない。将来の人材育成という理解がある先生や学校があれば、手を上げてほしいですね。何としても実現したいんです」

古希を超えたとは思えない、さらなる意欲的な夢を次々に語ってくれる吉国さん。こちらも何か応援したい気持ちにさせられるのは、何と言っても、さまざまな立場の人を見てきたご本人の人柄がなせるところ。

穏やかな笑顔のゆるいパワーに引きつけられて、吉国さんの周りには自然に誰かが集まってくるのです。

信州1%project参加企業(2020年3月現在)

※(  )は各企業の寄付内容

株式会社オフィスP’dj(毎月一定額)
有限会社木下商店(毎月一定額)
有限会社クマガイ印刷(毎月一定額)
古美術山木屋(ネットオークション売上の1%)
信濃工機株式会社(毎月一定額)
信濃ワイン株式会社(毎月一定額)
笑亀酒造株式会社(「笑亀 甘酒日和」売上の1%)
中信興業株式会社中信会館(日替わりランチ売上の1%)
株式会社Tom’s Green Field(お弁当売上の1%)
有限会社森川デンキ(オリジナルブランド商品売上の1%)
ラ・メゾン・グルマンディーズ(塩尻産ワイン売上の1%)
民宿 豊飯豊衣/Big Raccoon(宿泊費の1%)

※事情により寄付内容が変わることがあります

●信州ファンドレイジングチーム
「ファンドレイジング日本2012」に参加した長野県在住のメンバーが中心になり、2012年2月に設立。NPOのためのファンドレイジングを研究・実践する活動を続けながら、地元のNPO法人や地域活性化グループとも協働しています。

〒399-0705 長野県塩尻市広丘堅石98-2
TEL: 090-8597-2875(吉国)
E-mail:aoniyosi9500(a)gmail.com
※(a)を@にしてください。
https://www.1per-pj.net/(信州1%プロジェクト)

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